いちごいちえ




「なあ、もも」



「うん…?」



車がゆっくりと走り出し、前を見たままの瑠衣斗が私の名前を呼ぶ。


その横顔からは、表情を伺いしれない。


流れる景色も目に入らず、その綺麗すぎる横顔に目が奪われる。


そしてそのまま、ふっと緩まれた唇から、おもむろに瑠衣斗が口を開いた。



「…また来ような。一緒に」



「……え?」



「なんだその反応」



言われた意味が分からずに、思わずポカンとしてしまう。



一緒に…また?



また一緒に、ここにるぅと……。



「うん!!絶対また来たい!!」



「…そこまで嬉しそうに言われると、なんかちょっと複雑だな」



「……え?なんで?」



クスクスと苦笑いする瑠衣斗に、一瞬不安がよぎる。


来るまでは渋っていたし、やっぱり帰ってきたくなかったのかな…?

私が寂しそうにしてるから、そう言ってくれただけだった?



そんな私をよそに、チラリと横目で私を見ると、なんだか意味深に瑠衣斗が口角を持ち上げる。



「いつか隼人に取られそうで」



隼人君?


……あ。



思わず手の中の手紙を見ると同時に、瑠衣斗が楽しそうに笑う。


「あ〜…、ももと一緒に帰るたびに、隼人の成長にびくびくしそうだ。いつかももに捨てられそうだし。こえーなあ」



「るぅ…」



「ホントに、向こうにもこっちにも、ライバルが居すぎて困る」
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