いちごいちえ
駐車場のような場所には、私達以外の車はない。
予想外なほど、あっと言う間に車が到着してしまい、心の準備もなにもできていないままだ。
「あの…到着?だったりする?」
まさかこんなにも早く着いちゃうなんて……予定外だ。
ぽっかりと口を開けたように、駐車場の周りに沿って木々が連なる。
燦々と降り注ぐ日差しから、開けている事が安易に分かった。
「到着〜。って、ちょっとまだ歩かなきゃいけないんだけどな」
「そう…なんだ」
どうやらここからは、歩いて向かうらしい。
さぞかし立派な家にでも住んでいる人なのか………なんなのか。
予想してみてもさっぱりとイメージなんてできない。
なんとなく、瑠衣斗が何も言わないままなので、聞こうともしなかった。
適当な場所に車を停めると、瑠衣斗がエンジンを切る。
それが合図になるように、胸がドキドキと鼓動して主張しだす。
駐車場のすぐ脇には、綺麗な階段が造ってあり、車が停められている場所からでは、どこへと続いているかも伺い知れなかった。
「くっ……そんな…緊張しなくていいぞ」
「む、無理だよっ」
私を見た瑠衣斗が、笑いながらハンドルに体を預けながら私を覗き込む。
そんな事を言われても、緊張なんて解れるはずもなかった。