ぶす☆カノ


「あー、暑い」



突然、静かでちょっと重い空間で、内山さんがしゃべる。

確かに暑い。ギラギラ太陽の日差しが当たる。汗もかくし。



でも、今にも涙がこぼれそうな私は、そんなこと、気にしている余裕はなかった。

今まで感じたことがない、安心を、少し感じていたのだった。



隣に存在を感じて、優しくて、あたたかい。別に、沈黙も苦にならない。

なんだか不思議だった。



「おい」

「……なに?」

「俺、聞くことは出来るから。……バカだからアドバイスは出来ないだろうけどな」



私は涙で腫れてしまった瞳を、内山さんに向けた。

眼鏡は外してしまっていたから、彼の表情とかがよく見えない。



「泣きたかったら泣けばいい。辛かったら辛いって言えばいい。

あと、俺は言える立場じゃないけど、泣くよりは、笑ったほうが楽しいぞ?」



こくん、私は小さく頷いた。頷くと、涙が一粒こぼれた。

たしかに、泣くよりは笑うほうが楽しいし、幸せな気がする。

私は流れる涙は拭わなかった。



初めて他の人に、泣いてる姿を見せた。

たくさん泣いたら、笑おう。そう思った。


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