ぶす☆カノ


「この時間は、やっぱ人いないよな」



電車もここまで早い時間だと、学生は少ない。

会社に向かう人は、向かい側の電車を使うから、ちらほらいる程度。

がらんとした、車両に、並んで腰を下ろす。多少の空間は昔と同じまま。



「うん。私はこっちのが好きかな」

「たしかに人混みとか、嫌いそうだな」

「まあ、その通りだけど。昔から人混みは疲れるんだよね」



隣をちらっと見ると、内山さんも、こっちを見ていた。

いたずらに笑う内山さんがいて、私はちゃっかりした感じで肩を上げた。



「俺はなかなか嫌いじゃねぇけど」

「好きそう」

「なんか、可愛い女の子とか探しちゃう」



私はぶっ、と頬を膨らませる。



「すみませんね、隣も可愛くなくて」

「いや、お前可愛くないけど、なかなか楽しいやつだぞ」



どうせ、私は可愛くないもん。……って



「……え?」

「いや、なんでもない」



びっくりして、隣を見るとイヤホンを耳に付けて、俯いていた。

照れてるように見えたのは、私のただの気のせいだろうか。


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