嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】


もしも2人が、共謀していたら。


もしも2人が、敢えて身を隠していたら。



『(可能性は高いっ…)』



この学校で一番、人目に付かない場所。


それを知ってるのは私と、それから―――告白した時に呼び出された、灘谷くんしかいない。





よっぽど用事がある人以外は誰も使っていない“備品収納室”がある。


普段は鍵がかかっているけど、先生に任されてずっとそこが掃除場所だった私は暗証番号を知っていた。


鍵をかけるほどでもない。


ただ、化学の実験で使うフラスコや窓ガラスの新品など……割れたら困るものが所狭しとしまってあるだけの部屋。


ずっと学級委員をしていた私は、よほどその先生に信頼されていたらしい。


全校でもここに出入りしている生徒は、私とあと数人くらいなものだと以前聞いたことがある。


汚くて埃臭い部屋を想像していたけど、実際は真逆。


人があまり出入りしない所為で、壁は真っ白だしカーテンの染みもほとんどない。


陽光もたっぷりと入る、例えば読書には最適そうな綺麗な部屋。




―――告白場所は、ここにしよう。




あの日を迎えるまでの私は、月に一度の掃除に来る度にそんなことを考えていた。





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