嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
ふと視線を落とすと、時計の針がかなり進んでいた。
これじゃ、会議が…!
花寐先輩にああ言った手前、私が連れて帰らないわけには行かないのに…!
ぎりっと唇を噛み締めて、心臓が張り裂けそうになりながらも全力疾走をした。
所詮、文化部の私。
体力なんて、せいぜい短距離で8秒後半を出すくらいしかなくて。
備品収納室に辿り着くためには、少し体力が足りなかった。
『はあっ、はっ、ごほっ…はあ…!』
膝に手を添えて荒い呼吸を繰り返し、カラカラになった喉に唾液を飲み込んで流した。
切れてしまいそうに渇いた喉を構うことなく、私は大声を上げて扉を開けた。
案の定、鍵が掛かっていなかったドアノブはすんなりと動いた。
『夜錐先輩っ!!』