嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
「言いたいことはわかってる。まず……騙してごめん、山本さん」
『皆が待ってま……へっ?だ、だまっ……え?あの、えぇ…?』
「落ち着いて、ちゃんと全部話すから」
私の腕を引っ張り上げて、灘谷くんは側にあった椅子に座らせてくれた。
……どういうこと…?
灘谷くんはなんか楽しそうに笑ってるし、夜錐先輩は困った顔をしてそっぽを向いてるし…。
「…これは、俺と灘谷の賭けだったんだ。山本さんを巻き込んだ、ね」
何故か顔を僅かに赤く染めた夜錐先輩が、壁に凭れ腕を組みながらそう言った。
『か…賭け…?でも、あの、会議は…!?』
「ああ。あと30分したら始まる」
時計をちらりと見て、灘谷くんはさも当然のように言った。
……30分、後…?
『でも!は…花寐先輩が、すごく困ってて…!』
「…元睦もグルなんだ」
額を押さえた仕草のまま夜錐先輩は吐き出すように言うと、眉を下げたまま私を見た。
……ぐ、る…?