嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
「そう、俺の勝ちだ」
にやりと。
灘谷くんは私が見たこともない意地悪な笑みを浮かべて、ホワイトボードを机の上に置いた。
…さっきから、夜錐先輩は壁際を離れない。
なんで、こっちに来ないんだろ…?
「俺が勝った時の戦利品は―――」
そこで一旦、灘谷くんは言葉を切った。
ぐにゃりと歪めた口元に嫌味な笑みを携えて、夜錐先輩の方をじっと見つめている。
その視線に気付いた夜錐先輩は眉を顰めながら顔を上げ、深い溜息を吐いた。
「……わかってる」
その一言を聞いた灘谷くんは満足そうに笑みを浮かべると、私の方に向き直った。
…よくわからない2人のやり取りに、私は首を傾げるばかりだ。
「山本さん、知りたい?戦利品が、なにか」
まるで試すような物言いに、いくら相手が灘谷くんと言えどカチンときた。
私は怯まないように頬を強張らせて、大きく頷いた。