嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
『…聞いても良いなら、教えてください』
そう、付け足すと。
灘谷くんはスッと目を細めて、口元の笑みの一切を消した。
びくりと、私の肩が震える。
突然いつもの無表情に戻られたら、いくら私だって戸惑うというものだ。
小さな怒りを込めて、私は灘谷くんを見上げた。
「灘谷が賭けに勝った場合―――夜錐真尋は、好きな人に告白する」
予想外にも、背後から声が飛んできた。
思わず驚いて振り返ると、夜錐先輩の視線とかち合った。
深く絡み合う前に、私は反射的に目を逸らした。
…って、か。
今、告白って言わなかった?
誰が?
…え、夜錐先輩がしちゃうの?
『こく…告白、…するん、ですか』
なんで私の声は震えているんだろう。
…ううん、答えならわかってる。
フラれたことが悲しくて悲しくて、今にも泣きそうにだから。
『…っ、…頑張って…ください…!』