嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
だって夜錐先輩は、全然親しくもない私の相談をずっと聞いてくれて。
諦めろ、じゃなくて思いを突き通せなんて、素敵な言葉をくれた人で。
そんな夜錐先輩が、告白をするんだから。
今度は私が心の底から応援しなくちゃ、先輩に申し訳ないじゃない。
『夜錐、先輩ならっ……絶対、だいじょ、ぶですっ…!』
嗚咽が漏れてしまうのが、なによりも怖かった。
だってここには、灘谷くんがいる。
3週間前に自分に告白してきた子が、今は違う人のことを想って泣いてるなんて。
……それを知った灘谷くんが、私に失望するなら構わない。
―――でも。
その所為で、夜錐先輩と灘谷くんの関係にヒビが入ってしまうのだけは許せなかった。
どうか、罰なら私に。
そう願いながら、私は引き攣った笑みを先輩に向けた。
『…………頑張ってください、先輩』
2度目に贈った言葉は、さすがに震えていなかった。
良いの、これで。
何故か心が澄み渡っていくのを感じながら、私は少しの間だけ目を閉じた。