嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】
「もー…優梨ちゃんってば」
苦笑する紫折にごめんね、と思いながらも私は歯切れの悪い返事をした。
…だって、灘谷くんの顔に惹かれたわけじゃない。
中身に惚れてる私は、なにをきっかけに諦めれば良いの…?
『……紫折、私頑張るね…』
灘谷くんのことは、まだ好きだ。
でも、いつまでもうじうじしてるのは相談に乗ってくれる紫折にも申し訳ない。
……無理だけど、すぐにはできないけど。
早く気持ちを切り換えられるよう、頑張るよ。
「あ、イイ先輩がいたら教えてね!」
目をキラキラと輝かせて笑う紫折に、思わず苦笑した。
『……紫折はほんと、年上好きだよね』
私は別に、年上が良いとか年下が好きとか無いんだけど…。
いつも恋愛に貪欲で羨ましいなぁ…、そんなことを考えながら紫折と別れた。