Liar
初めて会った時からは想像できないくらい女性へと成長した彼女の体を抱き上げ、ソファーからベッドへ移し替える。
このまま襲ってもいいが、それでは自分の美学を汚してしまう。
ドアと共に私欲にも鍵をかけ、部屋を出る。
そして受話器を耳にあてた。
『……穹はどこだ』
聞こえてきた声は地の底から響くようなおぞましいものだった。
まったく、開口一番それか。
やれやれと息を吐き、諭すように相手に告げる。
「彼女は望んでここに来たんだ。君の知る所存じゃないだろう?」
『黙れ。穹は俺のだ』
どうやら話しても通じないらしい。
首輪の外れた狼は暴走してしまっていけない。