Liar
暴れ馬を乗りこなせるのはどうやら彼女しかいないらしい。
大袈裟にため息をつき、電話を持ったまま彼女の寝ている部屋へ入る。
そして寝息を立てる口元へ受話器を寄せた。
「聞こえるか?穹の寝息だ。これで彼女が安全だとわかっただろう?」
『……ッチ』
盛大な舌打ちを頂戴した。
電話越しでも憤りがわかる。
彼がここまで怒ることは珍しいな。
驚きを隠しつつ、最後に一言だけ告げる。
「穹を助けたいなら、殺せ」
『お前をか?』
「まさか。穹をだよ」
答えを聞く前に電話を切る。