Liar





色素を失ったような濁った瞳の中に、私はいない。




悔しい気もしたが、どうにもできない。




この二人が見ていたのは“私じゃない”。




「ママは死んだんです。死人の追憶に縋りつくのはやめてください」




「「……!」」




藍だけでなく、床に倒れ込んだ雨水まで息を呑んだのがわかった。




本当にこの人たちは……




溜息をつきたい気分だが、代わりに現実を教えてあげることにした。




「私はママ……雪じゃありません。私は穹なんです」




そう、彼らが見ていたのは、




渇望していたのは、




そして失ったのは、私の母親―――霜月 雪。





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