Liar





何日も何日も街を彷徨い続けた。




何も口にしなければいつか死ねると思って。




幼いあの日と同じことをしようとしていたんだ。




そしたらある日、すっかり衰弱しきった私の前に一人の男が現れた。




その人は鍵を持っていて、今日からこの部屋で暮らしなさいと言った。




思えば戸籍も国籍もない私が一人で生きていくのは不可能な話だった。




その日から私は1LDKのその部屋で生活を始めた。




知らないうちにお金は部屋に置いてあって、苦労することはない。




いつの間にか偽の戸籍まで作ってあって中学校にも通えた。




そうしている間に忘れていったんだ。




背中の傷の意味を。




私の過去を……





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