Liar





「そんな時にね、ある男に出会ったんです。

そいつは真っ黒いコートを着た変人で、自分は殺し屋だと単刀直入に言い始めたんです」




「それが、さっきのやつか」




「……はい。彼は殺し屋のくせにどこか愛嬌があって、憎めなくて、優しくて、あったかくて……」




「……大好きだったんだな」




はい。




そう言いたかったのに、言葉は出なかった。




かわりに大粒の涙があふれ出した。




「私を殺しに来たんです。でも、やっぱり私は殺されなかった。みんな、私を死なせてくれないんです」




最初は神様が怒ってるんだと思った。




でも、違った。




私が死ねなかったのはきっと……





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