Liar
あの忌まわしい記憶の中で一番鮮明に覚えているのが彼のこと。
以来、私はコイツのことを『詐欺師』と密かに呼んでいる。
仕事のために渡米したと聞いた時の歓喜は忘れられない。
それなのに……
「ちなみに、中富先生は明日から休暇に入るから。僕が担任の代わりをすることになるね」
「それはそれは。臓腑が煮え立ちそうです」
「それほどまで歓迎してくれるとは思ってなかったから嬉しいよ」
「御冗談を。歓迎せざるを得ない状況ではないですか」
いけ好かないとはこういうことだ。
笑顔でとんでもないことをやらかしてくれる。