Liar





あの忌まわしい記憶の中で一番鮮明に覚えているのが彼のこと。




以来、私はコイツのことを『詐欺師』と密かに呼んでいる。




仕事のために渡米したと聞いた時の歓喜は忘れられない。




それなのに……




「ちなみに、中富先生は明日から休暇に入るから。僕が担任の代わりをすることになるね」




「それはそれは。臓腑が煮え立ちそうです」




「それほどまで歓迎してくれるとは思ってなかったから嬉しいよ」




「御冗談を。歓迎せざるを得ない状況ではないですか」




いけ好かないとはこういうことだ。




笑顔でとんでもないことをやらかしてくれる。





< 46 / 176 >

この作品をシェア

pagetop