Liar
しかし、私とてそこまで子供ではない。
あからさまに彼を拒絶していたあの頃の幼子ではないのだ。
大人な対応だってできる。
第一、担任以上の関係を露見しなければいいのだ。
奴は先生、先生、先生……
「お待たせしました、如月さん。
……って、どうした霜月。もう如月先生の虜か?」
豪快に笑い声をあげる我が担任、中富。
胸中で溜息を洩らしつつ、ここにきた目的を告げた。
「おぉ、なんだそういうことか。えーっと、その書類は……」
机を漁りだす中富を尻目に、チラッと雨水の横顔を顧みる。