素直になること
*羅斗Side*
人生にやり直しはできない。
きっと初めのスタートを踏み外してしまったら、
いや、途中の分かれ道で間違った道を選んでしまったら。
もう、そこで人生の終わりがきていたのだ。
俺は長く生き過ぎたんだ。
道を一度踏み外した道なのに、また戻ろうとして。
人生、後ろへ戻ることは不可能なのに。
俺は決心した。
俺は今日、今ここで、死ぬのだ。
少しためらいながら飛び降りようとしていると、
いきなりか身体を後ろにもっていかれた。
振り向くとそこにいたのは女だった。見たことのない顔の。
『なんで止めるんだよ。』
俺は強く言ってやった。ありがとう、なんて言うわけねえ。
引き下がるか、と思うと今度は
『死ぬなんて言っちゃだめ!!だめだよ!』
俺の頭のスイッチを押すような言葉を言いはなった。
俺のことなにも知らないくせに。なんなんだよこの女。
憎たらしい女、それが俺にとって初めて思った理子への印象だった。