いつまでも君を見ている
私は何も喋らなかった。

いや、喋れなかった。

手塚さんは、義父さんをいい人に見せようと、作り話をしていると思ったから。

「その手紙も書いていませんし、社長から言われた訳じゃないですけど……」

「……」

「いつか、貴方の本当の家に、帰って来て下さいね」

本当の、家……?

私の本当の家って、どこ……?

「では、失礼します」

「あ、なにもお出し出来ずすみません……」

手塚さんは、微笑んで部屋から出ていった。









手紙は、開けないまま机の上に置いといてある。

開けるのが怖くて、そのままなんだ。
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