麗しの恋敵
私の隣を歩く一之瀬。
さりげなく私の歩く早さに合わせてくれるところは優しいと思う。
『…レポート、明日でも出せるから』
そう言ったきり、いつも煩いはずの一之瀬は別人なんじゃないかって言う位静かで。
いつも煩いから嫌だって愚痴っていた私なのに、本当に静かになっちゃうとこんなにも寂しく思うなんて―――
そっと横を見る。
「……」
相変わらず無言の一之瀬。
何時もより元気の無い横顔に胸が苦しくなった。