メルト・イリュージョン
「怪我してるの?」
赤ら顔から一点、青ざめて色をなくした私の手からペットボトルの水を奪い取り、彼は一気にそれを口の中に流し込む。
みるみる内に減っていくペットボトルの中身を眺めながら、それが私に与えられた猶予なんだと判断した。
私の腰に巻かれた包帯。その下には──
「お恥ずかしながら…ちょっと、前の任務で失敗しまして……」
情けないかな、こんなありきたりな理由しか思い浮かばない。
「……ふーん…」
そんな私をどう思ったのか。彼はどちらとも取れる曖昧な反応を見せ、あっと言う間に空になったペットボトルを近くの床に投げ捨てた。
ああ、こうやってゴミが溜まっていくんだ……
目の前に広がる惨状の原因を理解した私は、小さく首を振った。
そう言えば、2年前彼が住んでいたあのマンションも、かなりひどい有り様だったっけ……