メルト・イリュージョン
第二章*アンサンブルの虚飾

不毛よりのスパイ活動



正直に言おう、私は料理が壊滅的に下手である。


「……何、コレ?」

「ベ、ベーコン…‥です…」

とても、そうには見えないけど。

白い皿の上に盛られた不気味な黒い塊に、流石の彼も絶句しているようだった。


「よく、こんな芸術的な失敗作を作れるね」

決して誉め言葉の類ではないそれも、彼に言われると、何だかすごくいい気分になってしまうから不思議だ。


「ご、ごめんなさい…その、使い慣れないキッチンで……」

見苦しくも、そんな言い訳をしてしまうのは、ささやかな乙女心だと思って欲しい。


「ふーん、まぁいいや……じゃあ、あとはオレが作るからあんたはココにいて」

「……はい…」

ついには一口も手をつけられないまま、片付けられていくその皿の行方を恨めしく思いながら、私は小さく溜め息を吐いた。


ただ、一目だけでも、彼の喜ぶ顔を見たかっただけなのにな……


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