メルト・イリュージョン


あ。でも、そう言えば一度だけ……


『ロシアンブルーは、毛並みが良くて上品な猫なんだ』

って、言ってたような気がする。

だとすると、案外私も悪くないのかも…?



「はい、出来たよ」

「うひゃあ!?」

すると、その思考が途切れた絶妙のタイミングで乱入して来た声音に、私はそれこそ猫みたいな声を出して驚いた。


早まる鼓動を押さえて振り向けば、見るからに美味しそうな半熟の目玉焼きを二つ、皿に乗せた彼が佇んでいた。


「悪いけど、他に調味料はないから」

素っ気なくそう告げて、テーブルの上に置いたその皿を早速つつき始めた彼を見て、私も慌ててフォークを手に取る。

「い、いただきます」

彼の手料理を食べるのは2年ぶりなので、何だか妙に気恥ずかしくもあった。


「…んむ゛っ、!?」

だけど、一口、それを口に含んだ瞬間、塩辛いようなむず痒いような妙な感覚が襲って来て、私は目を白黒させて咳き込む。


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