メルト・イリュージョン


「そ…そんなに、大事な物でも入っているんですか?」

出来るだけ彼と目を合わせないように、皿の上の目玉焼きを見るふりをして俯く。


これ以上、彼の目を見てはいけない。彼の瞳には、宇宙の理が存在する。
その小さなブラックホールみたいな眼球で、総てを飲み込み、真実をさらけ出してしまう。

彼の瞳に見つめられているだけで、総てを洗いざらい話してしまいたい衝動に駆られる。


「入ってるよ。例えば……パスワードとかね」

その言葉に、息が止まりそうになる。


パ、スワード……


「へぇ…‥何の、ですか?」

──私が求めている物。


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