メルト・イリュージョン
「ダメ、ここから先は有料」
体を前に乗り出して、すっかり彼の巧みな話術に乗せられていた私は、ハッとして身を引く。
会話の幕切れを示すように、彼は手にしていたフォークを皿の上に投げ捨てた。
寛いだ感じでソファの背もたれに手をかけ、試すような視線を私に向けてくる。
「…でも、今ここで裸になったら教えてあげる」
「ん゛ん──っ!?」
真剣な顔つきそのものでそんな突拍子もない事を言われ、私はまだ口の中にあった目玉焼きを喉に詰まらせた。
彼が言っている事は、冗談か本気か分からない。
「な、ななな、なに、何言って…‥」
「なーんてね。はい、ごちそうさま」
気を動転させ、口をパクパクと泳がせる私をよそに、彼は空いた皿を戻しにさっさとキッチンに行く。
な、何なの……
「……完全に…からかわれた…」
強い脱力感を覚え、私は頭を抱えた。
『今ここで裸になったら教えてあげる』
「………」
彼じゃなかったら、完璧にセクハラで警察に突き出しているところだ。