メルト・イリュージョン

漆黒の不貞



再度、ノックをしてみる。


「──やっぱりいない、か」

もしくは、居留守を使っているかのどちらかだ。


「……よし、」

でも、ここまで来たからには、おいそれと尻尾を巻いて戻るわけにはいかない。


罪作りなほどに真っ青な青空を一度だけ眺め、小さく深呼吸をして、私は元は事務所として使われていたであろう、その建物の唯一の扉に手をかけた。


< 6 / 43 >

この作品をシェア

pagetop