ため息に、哀
「おい、これ空なんだけど!」
先輩が投げて寄越したドリンクのボトルは言葉どおり空っぽ。
俺は抱えていた三角コーンをその場に置いて、すぐさま中身を補充するために走った。
そうして戻ってくると練習は次に移っていて、俺が準備するはずだったコーンは先輩たちがコートの中に運んでいた。
慌てて手伝おうとすると、いいからとやんわり拒絶されてしまった。
情けなさすぎて、悔しい。
いつもはこんなことはない。
いつもなら。
ボトルが空なんてことはないし、練習で使う器具が用意されてないなんてこともない。
俺たちが練習をしていて、不便だと感じることなんてなかった。
いつも、高橋先輩がひとりでやっていてくれてたんだ。
男子だけでなく女子もサポートする立場。
それはどれだけ大変なんだろう。
それでもいつも辛そうな素振りも見せずに、俺たちが練習をしやすいように環境を整えてくれていた。