ため息に、哀

俺だって、別に本気で高橋先輩とどうにかなりたいと思ってるわけじゃない。

ただ、こっちを見てくれたらいいなーって、その程度だ。


あの顔で俺だけに微笑んで、あの声で俺の名前を呼んで、あの優しさを俺だけに向けてくれたら。

そう考えてるだけだ。

行動なんて、できるわけがないし、しようとも思ってない。


そんな生ぬるい自分の考えを改める出来事があったのは、今年も残すところあとわずか、冬休み目前の頃だった。





高橋先輩が、部活を休んだ。

聞くところによると、学校自体をしばらく休むらしい。

先輩の連絡先も知らない俺には、その理由を窺い知ることなんてできなかった。

二日も三日もずっとその顔を見られなくて、毎日がつまらなかった。


そして俺が久しぶりに高橋先輩を見たのは、二学期の終業式の日だった。


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