ため息に、哀
登校してきて校門をくぐり抜け、昇降口まで歩いている途中。
俯きながらフラフラと俺の前を歩いている女の子。
それが高橋先輩だと気づいたのは、先輩が二年生用の昇降口に入っていく瞬間だった。
驚くほどにやつれて、顔色も真っ青で、うつろな瞳をしていた。
いつも背筋が伸びていて、にっこりと笑っている先輩の面影は、どこにもなかった。
なにがあったんだろう。
そうは思っても、その後を追いかけて訊く勇気なんて、俺は持ち合わせていなかった。
俺が高橋先輩について知っていること。
色白で清楚で可憐で、可愛い顔をしていて、綺麗に微笑むこと。
言葉遣いや仕草が丁寧で上品で、育ちが良さそうなこと。
頭がいいこと。
バスケにすごく詳しいこと。
テーピングや応急手当が上手いこと。
誰にでも優しくて、そして厳しいこと。
それから、それから・・・・。
結局俺は、高橋先輩のことをなにひとつ、深くは知っていなかったことに気づいた。