ため息に、哀
「小野崎くん?」
その声だけでなく、走ってきた足音までもが上品なこの人は、マネージャーの高橋亜美先輩だ。
麗しい顔に鎮座するその目に、鼻血が噴き出てる俺の顔が映るなんて申し訳なくなる。
だけど先輩は、血まみれの俺に触れるのを嫌がる素振りを一切見せなかった。
マネージャーの鏡だ。
いろんな意味で涙が出そうだ。
「頭は上げないで、下を向いて。血を飲むと気分悪くなるから」
俺の頭を上に向かせていた手を離させて、ちゃんと処置をしてくれる。
ちなみに俺はその時すでに大量の血を飲み込んでしまっていたんだけど。
血の味が喉に残って気持ち悪い。
誰だよ、上向けなんて言ったやつ。
「みんなは練習に戻っていいから」
高橋先輩は集まっていた部員たちに練習を再開させ、ちょっと待っててね、と俺に言ってどこかに走っていった。