ため息に、哀
「私はこっちだけど、小野崎くんは?」
「あ、俺はこっちです」
俺たちの家は、どうやら学校を挟んで反対方向にあるらしい。
落ち込んでる暇はない。
本当に、今しかないんだ。
「じゃあまた・・・・」
「待ってください!」
背を向けて去りかけた先輩を、不自然なほど大声で呼び止めた。
幸い、まわりには誰もいない。
遠くで、どこかの部活が練習をしている声や笛の音が風にのって聞こえてくるくらいだ。
高橋先輩が、少し首を傾げて俺の言葉を待っている。
息を深く吸い込んで、思わず漏れてしまいそうな弱気な言葉を飲み込んで、俺は言った。
「俺の話を聞いてください」
いつもの笑顔を消して、真剣な眼差しで見つめられ、一瞬ひるむ。
でも、負けてなんかいられない。
今までの自分から生まれ変わるために、折れそうな勇気を振り絞って、話しはじめた。