ため息に、哀
ただ、好きですと。
それだけが伝えたくなったんだ。
先輩の大きな瞳がゆっくりと、少しだけ細められる。
なにかを思い出しているような、懐かしむような表情。
そこにわずかな寂しさがよぎったように見えたのは、俺の気のせいだろうか。
ざあっと、あたたかい風が吹き抜ける。
それは先輩の言葉を待っていて、まるで時間が止まったように思えていた俺に、時間の流れを感じさせた。
その風がやみ、静けさが戻ってきてから先輩はゆるやかに笑みをつくって言った。
「ありがとう」
本当に、綺麗に微笑む人だな、とこんな時だけど思った。
わかっていた答えだったからか、一世一代の告白だったけど、落胆はそれほど感じなかった。
むしろ、ほっとした気持ちの方が大きかった。
そもそも俺は好きだったと伝えただけで、今よりも近い関係になりたいとかそういうことを一切言っていない。
言っていないというよりは、言えていないというか、それで精一杯だったんだ。
それでも高橋先輩は先回りして、答えをくれた。