ため息に、哀

稲垣先輩を責めていた岡田先輩という人は、その怒りの矛先を今度は高橋先輩に向けた。


「黙れよ。ただのマネージャーになにがわかるんだよ」


高橋先輩はうつむき、顔は見えなくても泣き出しそうだというのがわかった。

それでも誰も止めに入れなかった。


正直に言うと、俺は次の標的が自分になるのが怖かったんだ。



「いつも見てるだけのやつに、俺たちの気持ちなんかわかんねえんだろ!」


それでも、その言葉だけは聞き流すことができなかった。

高橋先輩がいつもどれだけ俺たちに尽くしてくれているか、岡田先輩だって知らないはずはないのに。


俺は恐る恐る高橋先輩の方を見た。

泣いている姿なんて見たくなかったけど。


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