あわ玉キャンディ
デニムのポケットから、銀色の冷たいモノを取り出す。
...霧崎さんの部屋の合鍵。
別れを告げた日、返しそびれたもの。
返さなくちゃ、とは思っているけれど...
持ってたいんだ...。
この鍵であの部屋を開けることは二度とないんだろうけど、思い出として。
霧崎さんは、返してとも言わないし。
こんなもの持ってること自体おかしいんだろうけど...。
そんなことわかっていても、いつもポケットに入れて持ち歩いてるなんて――。
あたしは、おかしい。
未練がましい、だなんてわかってる...。
あたしは切なくなって、ぎゅっと合鍵を両手で包み込む。
そのとき。
マナーモードに設定した携帯が、テーブルの上でぶるぶると振動した。