あわ玉キャンディ


走り出さずにはいられなかった。

携帯と同じように机に置いてあった長財布を奪うように手に取って、コートも着ずに家を飛び出した。

右手に、合鍵を握りしめて。



運良く、すぐに捕まったタクシーに乗り込む。

行き先はもちろん―――

霧崎さんのマンション。









――なんで忘れたいなんて思ったんだろう。

忘れられるはずなんかなかった。


簡単に忘れられる想いなら...、

こんなに悩んだりしないのに。



たった3、4回スクロールしただけで読み終わってしまうあのメールに、


こんなに心揺さぶられたりなんかしないのに。


あたしは、とんでもないバカだ。






< 171 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop