あわ玉キャンディ
化粧室の鏡に顔を映す。
ベースメイクをしたあとに、ピーチ色のチークとホワイトのアイシャドー。
仕上げにベビーピンクのグロス。
たったそれだけ、時間にすると約15分。
楓に比べたら、良くてナチュラルメイク。
悪くて手抜きメイク。
...もっと化粧した方がいいのかな。
そう思ってバッグの中のポーチを開いてみるけど、化粧道具が少なすぎて。
「...はぁ。」
またひとつ、ため息をついた。
楓には悪いけど、帰らせてもらおうかな。
どうせ話題には乗り切れないしね。
でも、ここで帰ったら完全に霧崎さんには会えないよね...
...グッバイ、あたしの恋。
テンションがガタ落ちしながらも、化粧室を出る。
下げた視界に黒のブーツが映った瞬間、足を止めた。
「......。」
おそるおそる見上げた先にいたのは、
あたしを見下ろす霧崎さんだった。