あわ玉キャンディ



遠目からでも、彼だってすぐわかる。


段々と距離が縮まって、鮮明になってくる姿。

スーツに、少しセットされた髪。



逃げ出したい衝動に駆られるけれど、地面に根っこが生えたみたいに、足がびくとも動かない。

人は真横をどんどん通り過ぎてくけれど、あたしは止まったまんまで。




すれ違うまでの距離、約5メートル。


ふいに真っ直ぐを向いて、繋がった視線。

―――あの日見た、ブルーの瞳...





霧崎さんと隣の女の人は、楽しそうに、あたしのすぐ真横を通り過ぎていった。


赤の他人がすれ違うように、ごく自然に――



視界から消える彼の姿が、

ひどくスローモーションに見えた。





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