あわ玉キャンディ
やっとのことで、たどり着いたマンション。
びゅんびゅんと容赦なく吹き曝す冷たい風に、いつしか涙は渇いて。
もう、諦めよう―――
ひとときの思い出。
大丈夫。大丈夫...
きっと、忘れられる。
部屋で、あったことすべて。
素敵な思い出として。
きっと、過去にできる。
今なら、きっと。
しつこく、何度も何度も自分に言い聞かせる。
ガチャリと鍵を差し込んで、くるりと回す。
玄関に入って、俯いたあたしの視界に映ったのは、見覚えのある革靴。
あたしのものではない、靴。
「...っ!」
うそ。うそ...
―――――どうして?
あたしはこれ以上ないくらいの早さで、明りの点いたリビングにバタンと大きな音を立てて飛び込んだ。