難しい恋は遠慮させてください
ズキン…

あれ?
なんだろこの感じ…

罪悪感?

まさかね…。私と深川はもう関係ないんだから…

深川から目をそらして前を向くと、先輩の手が私の前を通ってシンバルと太鼓にのびた。

「ここはね、こう叩くんだよ」

前かがみになっているせいで、先輩の顔が近い。

前を向いているのも恥ずかしくなって私は下を向いた。

時々先輩の腕が私の頬にあたる。

目をつぶると今度は匂いが気になる。

先輩…香水付けてるのかな?

ミントのようないい香り…

どうしようもなくドキドキする。

それと同時に先輩とは逆方向からの視線への罪悪感。

なんだろ…すごく複雑…

唯一わかるのはすごく胸が苦しいってこと…



「そろそろ部活を終わりにするよー!みんなちょっと楽器やめてー!」

千夏先輩の一声でみんなが演奏をやめる。

「えーっと、部活は三時で終わりなんだけど自首練で六時までありらしいから、残る人とりあえず手あげて?」

ドラム練習しておきたいし、残ろうかな?

さっきは人がいっぱいいて思い切り叩けなかったし…

私は手をぴんと伸ばす。

「2人ね?あとは楽器片付けていいよー」

2人?

ふっと後ろを振り向く。

そこには遠慮がちに手を挙げている先輩がいた。
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