ストレート【調整中】
―二年前

九州大会の準決勝。

兄は中学校、最後の夏。

そんな晴れ舞台とは反対に
小雨がグラウンドへと降り注ぐ。


兄と対戦するのは
剛腕の二年生エース、
橘 桐(タチバナ キリ)
を中心とする優勝候補NO.1チームだった。

そんな相手に兄も気合いを入れて、調整を繰り返す。

野球する事を良く思っていなかった父と母も
兄の真剣に野球をする姿に
その日は、兄の応援に行った。

しょうがないな、と言う
両親の表情は、どの親よりも誇らしげだった。

あたしも
マニュアル関係無しの
自由で楽しそうにプレイする
兄の野球をする姿が
大好きだった。


リトル時代
桐と兄は同じチームで
桐は兄の事を本当の兄のように慕っていた。

あたしは兄を通じて
桐と話をよくしたりしていた。

リトル時代から
全国に名を轟かした桐の球が
中学に入ってどんな球を投げれるようになったのだろう、と
桐との対決を
兄は何よりも楽しみにしていた。


だからこの試合は
本当に楽しみだったんだ…。


…キリの最後の試合になるとも、知らずに。


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