ストレート【調整中】
雨が激しくなる。

兄は右肘を押さえ、うずくまっていた。

桐は
狂った様に
マウンドに拳を叩きつけていた。

あたしには
本当にそれは一瞬のでき事で

まるで白黒写真のように
止まっていて、霧がかかった映像が流れこんでくる。


兄がタンカーで運ばれる。

グランドがざわついていた。
母はあたしの隣で泣いていて
父はすぐに兄の元へ走った。


あたしは…

「桐…!」

その場を立ち上がると
フェンスまでいって

「キリ!
キリ!」

フェンスに拳を
打ち付けた。

…キリ!
キリ…気づいて!


ただただ
泣きながら叫んだ。

きっと、予感がしてた。
キリの事を
誰よりも
見ていたあたしだったから……。
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