ストレート【調整中】
「久しぶりだな!」
昔と変わらない笑顔で
里央があたしに笑いかけた。
あの頃より
少し背が高くなった。
声も低くなったし、高一なんて思わせない程、大人っぽくなった。
何で同じ学校で
こんな小さな変化にも気づかなかったのだろうね。
「…うん、久しぶり!!」
あたしもつられて笑顔になる。
彼は不思議な力を持っていると思う。
人を安心させたり、笑顔にすることが上手で、一緒にいて心地よい存在。
暗い所へ一筋の光を差し出す
月のよう―…
「…野球、してる?」
里央の表現が一瞬、曇った。
あたしは
これだけは聞かずにはいられなかったんだ。
だって、ずっと気になってしまっていたんだ。
桐が野球をしない、と言って
彼はとても狂った様に泣いていたから―…
桐の球に
見ているあたしが
焦がれるくらいだ。
直で捕っていた里央は
身体で桐の球を感じていた里央は
誰よりも
その球を理解し、味わい
感触を忘れられないことだろう。
とてつもなく
苦しくて、辛かったと思う―…