ストレート【調整中】
俺は『分かる』とか
相手を決めつける言葉は好きでは無いけれど
なんとなく分かるんだ
野球をしたくない訳じゃない
もっと簡単な別の理由
きっとあいつは―…
瞳を伏せ、掌を強く握り締める。
もしそうなら、俺には何も出来ない。
これはあいつが自分で切り抜ける問題だ。
「…今のまま、復帰しても速くならないって意味か…?」
瞳を床から保健医に向け、掠れた声できいた。
保健医は少し笑って、俺の頬から手を放し、自分の口元へと持っていく。
「…さぁね。」
「お前のこと、信じてもいいのか?」
保健医は俺の問いに返事を返さなかった。
変わりに、不敵な嫌な笑みじゃなく、綺麗な微笑みを見せた。
硝子玉の瞳が少しだけ、色を変える。
「…わかったよ。」
俺は一つ溜め息を溢すと、保健医を押し退け、背を向ける。
「…いいのか?俺を野放しにして。」
俺の背中に、保健医がポツリと問いかける。
「…先生と俺のキリを"マウンドに立たせたい"と言う気持ちだけは同じようだし。どういう魂胆かはしらねぇけど。…俺が入るべきでは無いと思う。だったら、俺はキリがいつでも投げれるように、構えとくだけだよ。」
俺が桐に出来ること。
俺だけにしか出来ないこと。
きっと、あるから―…