ストレート【調整中】
ドアを開けると心地よい風が額を掠める。
視界に入ってきたのは、豪快に開かれたベランダにつけられた、風と踊るように波をつくるブルーのカーテン。
彼はそこにいる。
「…お兄ちゃん。」
グローブを両手で多い、力をこめる。
今は下がってはいけない。
例え……
兄を傷つける事になっても―
「おぉ、公か。珍しいなぁ。」
カーテンからひょっと首を出す。私の姿を見つけると、焼けた肌により白さを増した歯を見せ微笑んだ。
私の表情は変わらない。
グローブを握る手が汗で滲む。
その姿を見て…私の腕の中のグローブをみて、兄は口を閉じた。
ベランダから部屋に入り、ドアを半分だけ開けた状態にする。
兄は乱暴にベッドに腰を下ろし、テレビをつけた。
この場に相応しくない、陽気な笑い声が遠くに聞こえる。
「まぁ…座れよ。」
真剣な顔つきで私に座るように促す。
しばらく動けなかった私も、コクンっと顔だけで返事をし、床に座った。