ストレート【調整中】
届かないのなら
何度でも、何万回でも
言ってやる。

いつだって
全力で声を張り上げるから…。

……あんたが苦しむ事はないんだよ?―、って。


「…キリ…野球、しよ?」

…自然と出た
懐かしい名前。

一つ、一つ
とめどなく溢れ出る、涙。

人は泣く事で強くなるというけれど
あたしはどんどん弱っていくよ…。

どんなに拭っても
涙は止まることを知らないから
あたしは拭わない。

地面に落ちては、水溜まりの一部と消えていけばいい。


桐の手を強く握る。
真っ直ぐにキリの瞳だけを見る。

ただ願った。

あたしの声
どうか届いて。

少しでいいから
あたしの話を聞いて…。

だけど…

「…今、明石の顔見るのつらい。」

人に気持ちが伝わるっていうのは難しいもので。

あたしはキリに
拒絶された―…。

キリは
あたしに背を向け

強く握った手は
簡単にほどかれてた…。

あたしは行き場のない手を強く握りしめ
桐の背中を見つめる。


…あたしは確かに見た。

キリの頬に流れるものがあったのを…。

あれは

雨…。

それとも

…涙、なの?



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