ストレート【調整中】
「私ママの事大好きだけど…空しか見ないママが怖くて、可哀想で…憎らしかった。
だから嫌になって…いつの間にか外へ出てたの。」
彼女は視線を下から俺の目へと向け、目を服の袖で拭った。
袖についた泥が彼女の目頭に付く。
「真っ暗で怖くて、いつの間にかここに来てた。…一人ぼっちで、本当に私はここで死ぬんだと思った。そしたら、パパに会えるな~、待ってたらママも来て、また前みたいに過ごせるのかな~って…そんな事思ってた。」
この小さな体にどれだけの思いを背負ったのだろう。
この涙を拭ってくれる大人は誰一人、彼女にはいなかったのだ。
俺は袖で彼女の瞳と若干の泥をそっと拭った。
彼女は一瞬、驚いた表情を見せたが、
「ありがとう」と少し照れたような表情を浮かべた。
「そしたらね…ブンブンって音が聞こえたの。真っ暗だったのに、その人の体は光ってて、天使さまだと思ったわ。思わず見とれてしまったの。」
震える声で言葉を絞り出す。
「間違いないわ。」
ひとさし指を俺へと向け、彼女は溜めた涙をこぼしながら目を細めて笑った。
「バット振っていたあなただった。」