ストレート【調整中】
あたしは
橘が去った屋上に
一人で立っていた。
あたししかいない屋上は
雨の音しか聞こえない。
雨は容赦なく
私の肌を打ち付けて、あたしを責める。
―…だから
雨の日は嫌いなの。
野球をしていたキリの姿を
鮮明に蘇させるから…。
そして
キリの痛みさえも
蘇させるから…。
―…
「もっと、打ちつけろよ!
キリの痛みは…こんなもんじゃない…。」
もっと
もっと…痛いんだよ。
あたしは
ただ雨を降らし続ける空に叫んだ。
お願い…。
もっと、あたしを傷つけて。
キリと同じ痛みを…。
キリの痛みを全部、
あたしにちょうだい。
あんたの痛み
あたしが全部、背負うから…
だから…
あんたは
何も無かった様に
昔と変わらず
マウンドで輝いてよ。
あたしはまるで子供の様に大声で泣いた。
雨に打たれる事しかできない
自分の無力さに…。
そして
…どんなに叫んでも
姿を変えない空が
…桐に見えて。