ストレート【調整中】
カーテンが再び開くと
先生はあたしの顔を覗き込み、

香水の甘い香りと綺麗な顔が、あたしの神経を麻痺させる。


「お前、結構可愛いな。橘には、勿体無いよ。」

人懐っこい笑顔で
ニカッと白い歯を見せた。

…は?

橘とあたしは
そんな関係じゃ…。


「勘違いです!あたしは…」

慌てて、弁解しようとベッドから出ようとしたその時…

「じゃあ、何?」

低音な声に
冷たい瞳。

さっきまでの
人懐っこいさは消え、
冷たい瞳であたしを見る。

先生の
硝子玉の様な瞳に
一瞬息をするのを忘れた。


「お前の事は知ってるよ。
…元リトル星浜ベイスターズのファースト明石公ちゃん。」

下からあたしを見上げる様にして
不敵な笑みを見せる。


…何、
なんで
あたしの事知ってるの?
何を知ってるの?


さっきまで
お前、て言ってたのに…。

こめかみから
汗が伝う―



あたしが後ずさりすると
先生はゆっくりと
距離を縮めず寄って来て。

あたしに近づく度に
ベッドに温もりと
軋む音を残す。


そして
あたし追いこむと

ふっ…と小さく笑い

あたしの額に
口づけをした。


先生の唇は
氷の様に冷たくて
熱い額に少し、熱を増す。


「…橘、まだ
あの試合ひきずってんの?」

あたしの顔を
覗き込むその顔は

何でも見透かした様な
妖艶な笑み。


な…んで、

「何であんたが知ってるのよ!」


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