楽園の炎
「そうね。旅人さんの、言うとおりだわ」

にこりと笑って、ナスル姫が勢い良く立ち上がったとき、いきなりぐるるる、という妙な音が響いた。
ありゃ、と憂杏が、手を己の腹に当てる。

「昼飯を、食いっぱぐれてたんだった。いや、お聞き苦しい音を、聞かせてしまいましたな」

照れたように頭を掻く憂杏に、ナスル姫は吹き出した。

「まぁ。じゃ、元気をくれたお礼に、お茶に招待しますわ。ちょうど、お菓子がありますのよ」

え、と驚く憂杏に、先程とは打って変わって、ナスル姫ははしゃいだ様子で提案した。

「いやしかし・・・・・・。わたしはとても、そのような身分では・・・・・・」

「構わないわよ。侍女頭さんの、息子さんでしょ? それに、いろいろなお話、持ってるって言ってたじゃない。是非お聞きしたいわ」

渋る憂杏の腕を引っ張り、ナスル姫はぐいぐいと、回廊を進んだ。
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